花を飾り続けて3年。建築設計士の暮らしと仕事を変えた小さな習慣

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花を飾り続けて3年。僕の暮らしに起きた5つの変化

花を飾り始めて3年が経った。最初は「試しに一輪だけ」と思って買ったダリアが、今では毎週の習慣になっている。振り返ってみると、花のある暮らしは単に部屋が華やかになっただけではなく、自分自身の生活スタイルや考え方まで変えてしまったことに気づく。

建築設計の仕事をしながら、週末に花と向き合う時間を持つようになって、僕の日常には確かな変化が生まれた。それは劇的なものではなく、じわじわと染み込むような、でも確実に感じられる変化だ。

1. 季節の移ろいに敏感になった

以前は「もう桜の季節か」「いつの間にか紅葉してる」程度の認識だった。でも花を飾るようになってからは、市場に並ぶ花の種類で季節を感じるようになった。3月になるとラナンキュラスやチューリップが増え、6月にはシャクヤクが出回り、秋にはダリアやコスモスが主役になる。

この変化は仕事にも影響した。建築設計でも季節感を意識した提案ができるようになり、クライアントからの評価も変わってきた。花を通じて季節を体感することで、空間に対する感覚が研ぎ澄まされたのだと思う。

2. 週末の過ごし方が変わった

以前の休日は、疲れを取るためにダラダラと過ごすか、溜まった雑務を片付けるだけだった。でも今は土曜の朝、市場に足を運ぶことが楽しみになっている。

僕の週末ルーティン:

  • 土曜朝8時:市場で花を選ぶ(所要時間30分)
  • 帰宅後:前週の花を片付け、新しい花を生ける(1時間)
  • 日曜:花を眺めながらコーヒーを飲む時間が増えた

この「何かを創る時間」が、月曜からの仕事への切り替えスイッチになっている。花を生けている間は仕事のことを考えず、ただ目の前の花と向き合う。この時間が、思った以上にリフレッシュ効果をもたらしてくれる。

3. 部屋の整理整頓が習慣化した

花を飾るようになって気づいたのは、花が映える空間には「余白」が必要だということ。散らかった机の上では、どんな美しい花も台無しになってしまう。

結果として、自然と部屋を片付けるようになった。花を生ける場所を確保するために、不要なものを処分し、テーブルの上をすっきりさせる。花のある暮らしを続けるうちに、ミニマルな空間づくりが身についていった。

4. 「観察する力」が身についた

花は生き物だ。毎日少しずつ変化する。蕾が開く様子、茎が水を吸い上げる様子、枯れていく過程。これらを観察するうちに、細かな変化に気づく力が養われた。

この観察力は、意外にも仕事の場面で役立っている。クライアントの表情の変化、プロジェクトの微妙な進捗の遅れ、チームメンバーの様子。小さな変化に早く気づけるようになったことで、問題が大きくなる前に対処できるようになった。

5. 自分の「好き」が明確になった

3年間で様々な花を試してきた。華やかなバラ、可憐なスイートピー、個性的なプロテア。その中で、自分が本当に好きな色や形、雰囲気が分かってきた。

僕の場合は、シンプルで構造的な美しさを持つ花に惹かれることが分かった。ダリアの幾何学的な花びら、アンスリウムの直線的なフォルム、カラーの彫刻的なライン。これは建築の仕事で大切にしている「構造美」と共通している。

花のある暮らしを通じて、自分の美意識や価値観を再発見できたことは、予想外の収穫だった。

花のある暮らしを始める前、僕が抱えていた日常

当時の僕は、建築設計事務所で働く30代前半。朝7時に家を出て、帰宅は夜10時を過ぎる日がほとんどだった。週末も図面と向き合うことが多く、気づけば「家は寝るだけの場所」になっていた。

自宅が「ただの箱」になっていた日々

皮肉なことに、僕は仕事で空間をデザインする立場にいた。クライアントには「光の入り方」や「素材の質感」について熱く語る一方で、自分の住む部屋には何の愛着もなかった。帰宅してすぐ目に入るのは、白い壁と無機質な家具、そしてデスクの上に散乱した資料。花のある暮らしどころか、生活感すらない空間だった。

朝起きてカーテンを開けても、心が動くものは何もない。コーヒーを淹れながらスマホをチェックし、シャワーを浴びて着替えて出勤する。この繰り返しに、特に疑問も持たなかった。「忙しい社会人なんてこんなものだろう」と。

気づかないうちに失っていた「余白」

当時の僕の思考パターンは、常に効率と結果を求めるものだった。

  • 移動時間はメールチェック
  • 昼食は15分で済ませてデスクに戻る
  • 週末の予定も「生産的」かどうかで判断する
  • 趣味らしい趣味もなく、あっても「スキルアップ」に繋がるもの

今振り返ると、これは完全に思考の余白がない状態だった。頭の中は常にタスクでいっぱいで、ふと立ち止まって「今、自分はどう感じているか」を確認する時間がなかった。

仕事では「余白の美学」を語りながら、自分の人生には余白を残していなかった。この矛盾に気づいたのは、ずっと後のことだ。

「何かが足りない」という漠然とした違和感

28歳の秋、ある日の帰り道。いつもと同じ電車に乗り、いつもと同じ道を歩いていた時、ふと気づいた。「このまま40代、50代になっていくのか」という問いが、頭をよぎったのだ。

別に仕事が嫌なわけではなかった。むしろやりがいは感じていた。でも、何か大切なものを置き去りにしているような感覚があった。それが何なのかは、その時点ではまだ言語化できなかった。

後から分かったことだが、それは「日常の中に美しさを感じる瞬間」の不在だった。仕事で美を追求する一方で、自分の生活には美的な体験がまったくなかった。花のある暮らしを始めてから、この違和感の正体がようやく理解できた。

当時の僕と同じように、「何となく物足りない」と感じている人は多いのではないだろうか。その答えは、意外と身近なところにあるのかもしれない。

「花なんて」と思っていた自分が、3年間続けられた理由

正直に言うと、僕は「花なんて」と思っていた側の人間だった。建築設計という仕事柄、空間には興味があったけれど、花は「女性が楽しむもの」「センスがないと無理」という固定観念があった。それでも3年間、花のある暮らしを続けてこられたのには、明確な理由がある。

「正解がない」からこそ続けられた

建築設計の仕事は、常に正解を求められる。構造計算、法規制、クライアントの要望—すべてにクリアすべき基準がある。でも花は違った。

最初に買ったダリアを花瓶に挿したとき、「これで合っているのか」と不安になった。でも数日後、その花が自然に傾いて、窓からの光を受けて美しい陰影を作っているのを見たとき、気づいたんだ。花には「間違い」がないと。

どんな飾り方をしても、それは自分だけの表現になる。この「正解がないからこそ自由」という感覚が、仕事で疲れた頭をリセットしてくれた。週末の30分、誰にも評価されず、ただ自分の感覚だけを頼りに花と向き合う時間。それが僕にとって、何よりの息抜きになった。

「失敗」が次の発見につながる面白さ

3年間で、数え切れないほどの失敗をした。水を替え忘れて花を枯らしたこと、茎を切りすぎて花瓶に収まらなくなったこと、色の組み合わせがちぐはぐで部屋に馴染まなかったこと。

でも不思議なことに、その失敗が苦にならなかった。なぜなら、失敗するたびに「次はこうしてみよう」というアイデアが湧いてきたからだ。

例えば、最初の頃は花の色選びに迷って、結局無難な白ばかり買っていた。ある日、思い切って深紅のバラを買ってみたら、想像以上に部屋が引き締まって見えた。それからは、「この色とこの色を組み合わせたらどうなるだろう」という実験が楽しくなった。

仕事では失敗が許されないプレッシャーの中にいる。だからこそ、花という「失敗しても誰にも迷惑をかけない」「むしろ次の学びになる」世界が、僕にとって貴重な場所になった。

「変化」を毎週感じられる贅沢

花のある暮らしを続けられた最大の理由は、毎週確実に「変化」を感じられることだと思う。

仕事は同じプロジェクトが数ヶ月続くこともあるし、日常生活も似たようなルーティンの繰り返しになりがちだ。でも花は違う。週末に買った花は、数日で表情を変え、1週間後には新しい花に入れ替わる。

この「確実に変化がある」という感覚が、僕の生活にメリハリをもたらしてくれた。月曜日の朝、新しい花が飾られたデスクを見ると、「今週も頑張ろう」と思える。金曜日の夜、1週間頑張った花に「お疲れ様」と声をかける自分がいる。

花を通して、時間の流れを意識的に感じられるようになった。これは、忙しい日々の中で見失いがちだった、大切な感覚だったと今は思う。

花を飾ることで変わった、僕の5つの習慣

花を飾り始めてから、自分でも驚くほど日常の習慣が変わった。それは「花のある暮らし」を意識的に取り入れたというより、花を飾ることで自然と生活のリズムが整っていった感覚に近い。ここでは、花を通じて変化した僕の5つの習慣を紹介したい。

1. 朝、必ず花の状態をチェックするようになった

以前の僕は、朝起きてすぐスマホを見る生活だった。それが今では、まず花の様子を確認することから一日が始まる。水が濁っていないか、茎が傷んでいないか、花びらの状態はどうか。この5分間の観察が、不思議と気持ちを落ち着かせてくれる。

特に変わったのは、花の変化を通じて季節の移り変わりを感じられるようになったこと。同じ種類の花でも、気温や湿度で持ちが全く違う。夏場は3日で水が傷むが、冬場は1週間もつ。こうした変化に気づくことで、自然のサイクルを身近に感じられるようになった。

2. 週末の過ごし方に「目的」ができた

花を飾るようになってから、週末の市場通いが習慣になった。以前は「なんとなくダラダラ過ごす」ことが多かった休日に、明確な目的ができたのは大きい。朝8時に家を出て、市場で花を選び、帰宅後にアレンジメントをする。この一連の流れが、週末の充実度を格段に上げてくれた。

市場では毎回違う花に出会える。「今週は何を飾ろうか」と考える時間が、仕事のストレスから完全に頭を切り替えるスイッチになっている。

3. 部屋を片付けるようになった

これは意外な変化だった。花を飾ると、その周辺が自然と片付く。せっかく綺麗な花があるのに、周りが散らかっていると台無しだと感じるようになったのだ。

最初はリビングのテーブルだけだったが、今では玄関、書斎、ダイニングと、花を飾る場所が増えるたびに、その空間全体を整えるようになった。花が「空間の質」を意識するきっかけを作ってくれたと言える。

4. 「待つ」ことができるようになった

つぼみの状態で買った花が、数日かけてゆっくり開いていく。この過程を見守ることで、「すぐに結果を求めない」姿勢が身についた。仕事では常に効率や成果を求められるが、花は急がせることができない。水を替え、適切な環境を整えて、あとは待つしかない。

この「待つ時間」が、せっかちだった自分を変えてくれた。焦らず、花のペースに合わせる。その感覚が、仕事や人間関係にも良い影響を与えているように感じる。

5. 人との会話が増えた

花を飾っていると、訪ねてきた友人や同僚が必ず反応してくれる。「この花、珍しいね」「どこで買ったの?」といった会話から、思いがけず話が広がることが多くなった。

特に印象的だったのは、普段あまり話さない上司が「実は俺も花が好きで」と打ち明けてくれたこと。花という共通の話題が、人との距離を縮めるきっかけになることを実感した。花のある暮らしは、自分だけでなく、周囲との関係性も豊かにしてくれる。

花のある暮らしがもたらした、予想外の副産物

花のある暮らしを始めて3年。当初は「部屋に彩りが欲しい」という単純な動機だったが、続けていくうちに予想もしていなかった変化が次々と訪れた。花を飾ることで得られたのは、視覚的な癒しだけではなかった。

時間の使い方が劇的に変わった

最も大きな変化は、週末の過ごし方だった。以前は休日になると、特に予定もなくダラダラとスマホを眺めて過ごすことが多かった。しかし花のある暮らしを始めてからは、毎週土曜の朝に市場へ足を運ぶことが習慣になった。

この「決まった時間に外へ出る」という行動が、思いのほか生活リズムを整えてくれた。朝7時に起きて市場へ向かい、花を選び、帰宅後にアレンジする。この一連の流れが終わる頃には午前中が終わっている。すると自然と「午後は別のことをしよう」という意欲が湧いてくる。

以前は「休日を無駄に過ごしてしまった」という罪悪感を抱えることが多かったが、今は「今週も充実した週末だった」と思えるようになった。花を飾るという小さな習慣が、時間管理の軸になったのだ。

観察力と集中力が研ぎ澄まされた

花を扱うようになって気づいたのは、自分の観察力が明らかに向上したことだ。最初の頃は「赤い花」「白い花」程度の認識だったが、今では同じバラでも品種による花びらの重なり方の違いや、茎の太さ、葉の形状まで自然と目が行くようになった。

この観察力の向上は、意外にも本業の建築設計にも影響を与えた。クライアントとの打ち合わせで、以前なら見逃していたような細かな要望のニュアンスを拾えるようになったのだ。「なんとなく明るい感じ」という曖昧な要望に対して、具体的な提案ができるようになった。

また、花をアレンジしている30分から1時間は、完全に作業に没頭できる。スマホの通知も気にならず、仕事のことも頭から離れる。この「集中して手を動かす時間」が、平日の仕事で疲れた脳をリセットしてくれる。マインドフルネスという言葉が流行っているが、花を触っている時間は自然とそういう状態になっているのだと思う。

人との関係性に新しい接点が生まれた

予想外だったのは、花を通じて人間関係が広がったことだ。SNSで自分のアレンジメントを投稿するようになってから、「実は自分も花が好きで」と声をかけてくれる同僚や友人が何人もいた。男性からの反応も多く、「どこで花を買っているのか」「どうやって選んでいるのか」といった質問を受けるようになった。

職場でも変化があった。会議室に季節の枝ものを飾るようになったところ、「この枝、何ていう名前ですか」と話しかけられることが増えた。花という共通の話題が、普段あまり話さない部署の人との会話のきっかけになっている。

花のある暮らしは、単なる趣味の域を超えて、自分の生活全体に良い影響を与え続けている。始めた当初は想像もしていなかった副産物だが、今ではこれらの変化こそが、花を続ける大きなモチベーションになっている。

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